★第7回ジビエ料理コンテスト プロ部門 一般社団法人全日本司厨士協会会長賞★
但馬 彰典 様(ホテルニューオータニ トゥールダルジャン東京)
【レシピのポイント】
今回、伝統的なフランス料理であるウェリントンという料理に鹿肉にスポットを当て、より魅力を引き出せるよう、ジビエ料理として再構築しました。
まだ一般的ではない鹿肉も、フランス料理では高級食材として重宝されています。鹿肉に和を連想する食材や、私の故郷である大分県の食材を合わせ、そこにフレンチのエッセンスを加えることで、どこか馴染みのある、日本人に合った新しいフランス料理にしようと思いこのレシピを考案しました。
鹿肉は共役リノール酸という不飽和脂肪酸が多く含まれ、疲労回復、免疫力の向上などの効果があります。サツマイモなどのイモ類も体を温める効果があり、一緒に摂取することでこれからの寒い時期や、昨今のコロナ禍を乗り切るために必要な栄養素であると思います。さらに、鹿肉のイノシン酸と醤油のグルタミン酸、干しシイタケのグアニル酸でうま味の相乗効果が期待でき、深みのある美味しさが表現できました。また、味噌と香草のマリナードに漬けることで柔らかくする効果とともに、臭みをとって良い意味での鹿肉らしさを残し、調理しました。
うま味溢れるように焼き上げた鹿肉とパイ生地のサクサク感、さわやかな柚子が効いたソース、まとまりのある付け合わせと、すべてが味、見た目はもちろん、栄養面でもバランスよく仕上げられたと思います。
フランス料理に携わる人間として、ジビエに普段から触れる機会は多く、以前よりはジビエというものが普及し、食べられるようになってきたと思います。
しかし、まだまだジビエの魅力を知らない方が多くいるのも事実です。また、害獣としてのイメージや、臭いがあり、かたくて美味しくないというマイナスな印象が先行している方もいると思います。
この料理を通して、ジビエの魅力をたくさんの人に伝える。その過程で一緒に地方の食材も知ってもらえれば、地域活性化や地産地消にも繋がると思います。猟師さん、生産者の方々、自治体の方々、そして我々料理人が協力することによって、より強く発信していけると考えます。例えば鹿肉とセットで地方の特産品をネット販売する。お取り寄せグルメなどが流行っているので、遠くの都心部の方々の目に触れる機会が増えると思います。
そして今回、大分県の食材を使用したのは、料理人として何か少しでも地元に貢献したいという思いがあったからです。鹿肉(ジビエ)の魅力や美味しさと、大分県の良さがたくさんの方に伝われば、これ以上嬉しいことはありません。
| 鹿ロース肉 | 200g |
| キャベツの葉 | 大きめ2枚 |
| パイシート | 1枚(約19cm) |
| 卵黄 |
1個 |
| 粒生黒コショウ | 2g |
| フルール・ド・セル | 2g |
◆鹿肉のマリネ液
| 白ワイン | 250cc |
| タマネギ | 20g |
| ニンジン | 15g |
| ポワロー | 10g |
| セロリ | 10g |
| タイム | 10g |
| ローリエ | 1/4枚 |
| 白コショウ・黒コショウ | 各0.5g |
| コリアンダーホール | 0.2g |
| 赤だし味噌 | 40g |
◆シイタケのデュクセル
| エシャロット | 10g |
| 無塩バター | 10g |
| シイタケ | 50g |
| 干しシイタケ | 30g |
| もち麦 | 7g |
| パセリ | 2g |
| 昆布 | 2g |
| 水 | 150cc |
| 赤だし味噌 | 3g |
◆白ネギのコンフィ
| 白ネギ | 1本 |
| オリーブオイル | 50cc |
| タイム | 1/2本 |
| ニンニク | 1/4片 |
| ローリエ | 1/4片 |
| 塩 | 2g |
| パンチェッタ | 4g |
| タマネギ | 8g |
| ごぼう | 28g |
| チキンブイヨン | 50cc |
| 無塩バター | 10g |
| 白コショウ | 0.2g |
| ローリエ | 1/4枚 |
| サラダ油 | 200cc |
◆サツマイモのドフィノワーズ
| サツマイモ | 70g |
| ジャガイモ | 70g |
| ニンニク | 1/4片 |
| 無塩バター | 20g |
| 生クリーム(35%) | 50cc |
| 塩 | 1g |
| 黒コショウ | 0.2g |
| ジャワペッパーキュベベ | 0.2g |
◆ベシャメルソース
| 無塩バター | 10g |
| 薄力粉 | 10g |
| 牛乳 | 70cc |
| ナツメグパウダー | 0.2g |
| 塩 | 0.5g |
| 生クリーム(45%) | 10cc |
| パルメザンパウダー | 4g |
◆燻製醤油ソース
| チキンブイヨン | 500cc |
| 無塩バター | 20g |
| 燻製醤油 | 4cc |
| 柚子 | 1/2個(果汁で10cc) |
| コーンスターチ | 5g |
| 水 | 8cc |
◆ワサビのジェノベーゼ
| 刻みワサビ(チューブ) | 5g |
| おろしワサビ(チューブ) | 2g |
| ワサビ菜醤油漬け | 30g |
| 西洋ワサビ(冷凍パック) | 10g |
| 燻製醤油 | 5cc |
| オリーブオイル | 5cc |
◆ジロル茸とトランペット茸のフリカッセ
| ジロル茸 | 4個 |
| ドライトランペット | 水で戻した状態で2g |
| 芽キャベツ | 2個 |
| サラダ油 | 5cc |
| 無塩バター | 10g |
| エシャロット | 4g |
| 塩 | 0.5g |
◆飾りハーブ
| マイクロアマランサス(なければ食用紫菊で代用) | 12本 |
| ピーテンドリル(なければ豆苗で代用) | 8本 |
① 鹿ロース肉をマリネする。
白ワインに細切りにした玉ネギ、ニンジン、ポアロー、セロリとスパイス、ハーブを入れ一度沸かし、冷ます。(鹿肉をトリミングした際にでたクズ肉も一緒に入れて沸かす。)そこに赤だし味噌を合わせる。トリミングした鹿ロース肉を一日マリネする。
マリネした後、周りの水気をふき取り、フライパンで鹿肉の周りに焼き色をつける。
② シイタケのデュクセルを作る。
干しシイタケを昆布、水150ccと一緒に真空包装して10分間スチームコンベクションオーブンのバプールで加熱し戻しておく。
干しシイタケを取り出し、みじん切りにしておく。戻し汁は漉して取っておく。
みじん切りしたエシャロットを無塩バターで優しく炒め、上記の干しシイタケ、みじん切りにしたシイタケ、もち麦を加え、炒める。そこに戻し汁100ccを加え、蓋をして加熱する。
もち麦が炊けたら蓋を外し、水分を飛ばすように炒める。
十分に水気が飛んだらボールに移し、粗熱が取れた後、さらに細かく刻む。みじん切りにしたパセリと赤だし味噌を加え、合わせておく。
キャベツの葉を2%の塩水でシャキシャキの食感が残る程度に茹でる。
氷水に落とし、水気をとってから綿棒などで繊維をつぶしておく。
③ 鹿ロース肉をパイシートで包み、焼く。
シイタケのデュクセルをラップの上に5mmくらいの厚さで伸ばし、鹿ロース肉を巻く。
さらにキャベツの葉で巻く。パイシート全体に水10ccで伸ばした卵黄を塗り、鹿背ロース肉を包む。パイシートの表面に卵黄液を塗り、冷蔵庫で5分間乾燥させる。その後卵黄液を二度塗りする。
230℃に予熱したコンベクションオーブンで芯温45℃に設定し10分間焼く。
(鹿ロース肉を巻いていく過程で肉の中心に目印として竹串などを刺したまま巻いていくと、パイシートの上からでも肉の中心に芯温計が刺せます。)
10分間で綺麗な焼き色がつけば、110℃に温度を下げ、焼いていく。
芯温が45℃に達したらオーブンから取り出し、予熱で加熱しながら寝かせる。
(芯温計を刺したままにし、65℃に達してから最低15分間寝かせる。もし65℃に達しない場合は100℃のオーブンで追加熱する。)
寝かし終わったら、切り分けて断面に刻んだ粒生黒コショウとフルール・ド・セルを添える。
④ 白ネギのコンフィを作る。
白ネギの青い部分を切り落とし、白い部分をよく洗う。
オリーブオイル、ニンニク、タイム、ローリエ、塩2gと一緒に真空包装し、15分間スチームコンベクションオーブンのバプールモードで加熱する。
ごぼうのラグーを作る。
パンチェッタ、玉ネギ、ごぼう20gを千切りにし、無塩バターで炒める。
チキンブイヨンとローリエ、白コショウ0.2gを加え、ごぼうが柔らかくなるまで煮る。
ごぼうのフリットを作る。
ごぼう8gをささがきにして軽く水で洗う。その後170℃のサラダ油で揚げる。
白ネギのコンフィを斜めに切り分け、上にごぼうのラグー、フリットを盛りつける。
⑤ サツマイモのドフィノワーズを作る。
ニンニクを無塩バターでゆっくり火を入れ、すりつぶす。そこに生クリーム、塩、黒コショウ、ジャワペッパーを入れ合わせておく。
サツマイモとジャガイモの皮をむき水にさらす。スライサーなどできわめて薄くスライスし、上記の生クリーム液と合わせる。型にジャガイモとサツマイモが層になるように交互に敷いていき(1.5cm~2cmの厚さまで)、コンベクションオーブン130℃で40分間加熱する。
焼きあがったら上から平らなものでプレスしながら粗熱をとる。
ベシャメルソースを作る。
無塩バターを熱して薄力粉を加える。粉がなべ底につくようになったら牛乳を2回に分けて加え、混ぜ合わせていく。塩、ナツメグパウダーを加え、一度裏漉しておく。
粗熱が取れたら8分立てにした生クリームをさっくりと合わせる。
サツマイモのドフィノワーズを丸型で抜き、上にベシャメルソースをかける。
さらにパルメザンパウダーをふりかけ、表面に焼き色を付ける。
⑥ 燻煙醤油ソースを作る。
チキンブイヨン500ccを煮詰め、100ccほどにしておく。
無塩バターを鍋で加熱して焦がしバターにし、燻煙醬油を加える。
上記の焦がしバターを煮詰めたチキンブイヨンに加え、水で溶いたコーンスターチでとろみをつける。一度漉して、仕上げに柚子果汁を加える。
⑦ ワサビのジェノベーゼを作る。
材料すべてを合わせよく刻む。ティースプーンを2本使い成形する。
⑧ ジロル茸とトランペット茸のフリカッセを作る。
ドライトランペットを水に20分間漬けて戻しておく。その後水気をふき取っておく。
芽キャベツを2%の塩水で下茹でしておく。葉は4枚別にして半分に切って飾る。残った芽キャベツは1/4に切っておく。
ジロル茸の表面のごみをキッチンペーパーなどで払ってきれいにし、1/3に切っておく。
熱したフライパンにサラダ油を入れ、ジロル茸、トランペット茸を加えて炒める。
一度取り出して、同じフライパンに無塩バター、みじん切りにしたエシャロットを入れ炒める。
そこに芽キャベツ、ジロル茸、トランペット茸を加え、塩0.5gで味を整える。
皿に各パーツとピーテンドリル、マイクロアマランサスを一緒に飾り付け、完成。